2017年1月21日土曜日

Mitsuko Uchida san on Talent



才能だけで十分か。私の答えはノーです。でも才能の意味合いで変わりますから私の言葉で才能とは何かを話したいと思います。

まず第一に、音楽のみを通し深い感情を表現したい気持ちが、心の奥底から強く根付いていること。もし詩を書きたいなら、絵を描きたいなら、貴方は音楽家ではありません。生れながら音楽が最も大切で表現したい欲望があること、それがまず第一のポイントです。第二。知力です。ある程度知識や理解力がないとバッハから他の多くの音楽を理解することは出来ません。ですから、あると便利です。便利以上に必要不可欠なものと言っても良いと思います。三つ目に、皆さんもご存知の通り技術です。技術が高く評価されていますが、それは今も昔も変わりません。次に四つ目。カリスマです。昔でしたら才能のうちとは考えられなかったのですが、カリスマも才能のうちです。これら三つ述べておいて言いますが、実は、一番目の項目以外は、音楽を本当に理解し、信念があれば全て付いてきます。才能が生まれつきのものだと思わない訳はそこにあります。その他に必要なものは個性。音楽家であろうと画家であろうと政治家であろうと、個性は必要です。個性は人格の中心であり、これなしには個人は成長することが出来ません。この点で個性は最も重要と言えます。そして、最も難点なこと。運がいいこと。こればっかりは自分の判断外です。とにかく、これらが私なりに思う才能です。

しかし、世間が議論していることと言ったら社会の変化だったり、20世紀発達したテクノロジー、その影響であったり、レコード会社が昔と違うやら、経済問題、銀行が全てを破壊したやら。ノー!私には関係ない。それ以上言うことはありません。ですが世間は議論を続け、ipodを聴いて、CD買う代わりにダウンロードして、コンサートに行きたければ行く、で良いのです。ただひとつ。人々が良質のクラシック音楽を求めなくなったのは、現代の生活習慣から生じた問題です。子供はまず家庭で音楽を聴き、そして学校で美しい音楽に触れる。もしこの二つが存在しなかったら、クラシックだけでなくどうやって音楽を聴くのでしょう。クラシック音楽には、才能のうちとして良い耳が必要です。

最後に。財団唯一の現役の音楽家として申し上げたいのは、生活が出来ていることです。私をも含め、大多数が、子供をイートン校に送れるような裕福な家庭から来ておりません。ですから稼がなければなりません。そうは言いましたが音楽家は職業ではありません。天職です。これは忘れてはなりません。もし聴きに来た方が支払いたくないと言っても私は弾きます。音楽家であることは名誉なことなのです。しかし、この溢れる数の中どうやって生きて行くか。我々財団の仕事は特に最も才能あるものが生き残れるよう手助けすることです。


音楽家であることは名誉そのもの。私はそれ以外やりたいことはない。以上です。ありがあとうございました!

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